数年前、奥多摩へ渓流釣りに出かけて野営をするハメになった。
客観的に見たら遭難してるとしか見えないけど、帰る道筋はわかっている状況だったので個人的にはギリ遭難ではないかなぁって思ってます。思ってるだけですが。
遭難に近い、そんな状況のなか、持っていた装備のおかげですごく気分が救われたものがあったので、紹介していきたいと思います。
もしかして遭難?
9月半ばもすぎたころ、奥多摩エリアは10月から渓流釣りが禁漁となってしまうため、ちょっと(かなり)足を伸ばして、最源流域と言われる上流の山中まで足を踏み入れた。具体的には日原川のあたり。
思ったよりも釣果が芳しくなく、本流から支流へとどんどん足を進めていくうちに夕方になってしまった。
渓流釣りは川の中をバシャバシャと上流へ釣り進むのがセオリー。林道(未舗装)沿いの支流なのでどこかで林道へ上れるんじゃないかと思っていたが、どうやら支流を間違えたようで林道が見当たらない。仕方なく帰りも川の中を歩く。
行きは登れたちょっとした滝が、下りだと降りれなくなったりすることもよくある。登るよりも下るほうが難しい。道に迷っているわけじゃないけど、すんなりとは進めない。森の中を迂回したりしているうちにみるみる日が落ちていった。
林道がある本流までどのくらいあるんだろう。
行きは釣りながら上がってきたので、注意力が釣りに向いてしまっていて距離の感覚が測れていない。
まだ支流を脱出していないし、本流に至っても道路に戻れるポイントはかなり先のほうだ。
19時すぎまでは薄暗く周囲が見えたけど、じきに足元も見づらくなってしまった。
川の中を進もうにも、踏み出す先の水深が暗すぎてまったくわからない。
ヘッドライトを取り出したが、夜の渓流を下るのは自殺行為に近い。それこそ遭難してしまう。
野営を決意
スマホのGPSでおおまかな現在地はわかるけど、電波が届かないのでマップが読み出せず、かなり雑な地図が表示されるのみ。
電波が届かないのでキャッシュされたデータを展開することになる。奥多摩湖はカクカクに表示され、小さな支流は跡形もない。
林道までたぶんけっこうあるな・・・。
夜の山中は漆黒の闇というくらい何も見えない。月や星の明かりすら届かないそこは、人間の目では一面黒塗りの闇に映る。
ものすごく気が進まないけど、ここで野営することにした。
装備の確認
食料はオヤツに取っておいたパチもんのカロリーメイトっぽいのが一箱。
渓流でコーヒーを飲んだりするのが好きなので、常備していたものがレギュラーコーヒー2パック、コンポタ2パック、レトルト味噌汁3つくらい(数は正確に記憶してない)。
あとペットボトルのスポーツドリンクが半分以下。
アルコールを燃料に使う、手のひらサイズの小型ストーブと、それの五徳兼風防として使っている小型ネイチャーストーブ、アルコール燃料が500mlボトルに8分目くらい。水なら2リットルくらいは沸かせる。あとは釣り具とナイフに、ちょっとしたアウトドアグッズ。
昼にコンビニのおにぎりと唐揚げと味噌汁を食べたあとはひたすら釣りをしていたので、スポーツドリンク1本を飲み干して、もう1本を半分ちょっと飲んだくらい。
正直すごくおなか空いた。
20時すぎ。
アルコールストーブで沢の水を沸かし、カロリーメイトを食べながらコンポタをすする。
状況はよくないが、暖かいものを食べるととても気持ちが落ち着く。
沢歩き用のウェーディングシューズは濡れているので脱いで、ずぶぬれの靴下も脱ぐ。足の指が冷たい。
ネイチャーストーブに木の枝を入れて少量のアルコールを着火剤代わりに火を熾す。
足はすぐ暖まったけど、靴下は簡単には乾かない。
靴下はあきらめてシューズを履いて乾かす。
雨が降ってなくて本当に助かった。これ雨降ってたら絶望感ハンパなかった。小枝は濡れて火が点かず、雨具を持っていなかったので体温を奪われて間違いなく遭難していた。
23時ごろ。
寝床を確保する。
岩を背にしたり床にしたりすると体温を奪われそうなので木の窪地で寝ることにした。
昼は汗だくだったけど夜はやっぱり冷えてきた。けど思っていたほど寒くはない。まだまだ夏でよかった。
スマホは電波が届かない場所だとバッテリーの消費が激しいので、電波圏内入ったときのために電源をオフにしてバッテリーを温存した。
時計を持っていないのでこれ以降時間がわからなくなるが特に問題じゃない。
木々に覆われて空が見えない。かろうじて、星が出ているように見える。
雨は大丈夫そうだととりあえずホッとする。
野生動物(特に熊や猪)の襲撃が恐いので、木を背にして周囲に釣り糸を張り巡らせて、ルアー(釣りの擬似餌。金属でできている)の束をぶら下げて、糸に何かが触れると音が鳴るようにしてみた。かなり小さな音だけどないよりはマシかな。魚を捌くための小型シースナイフを護身用に取り出す。
シートにくるまって、首にタオルを巻いた。人間の体温は首から上で3割くらい奪われていくので、タオルを巻いたりフードをかぶったりすると体力の消耗を抑えられる。マウンテンパーカーにほぼ必ずフードが付いてるのは機能性重視のデザインなんだなぁとつくづく思う。
背負っていた15Lのザックに足を突っ込んでさらに保温性を確保する。
身体中と周囲にディードの虫除けスプレーを振り撒いて、虫やダニに刺されないように対策した。
火を消すと一気にさみしくなる。
小枝を集めておいていつでも火を熾せるようにしておいた。
夜明けまでたぶん6時間もない、だけど、長い夜になりそうだ。
このあとすぐ、再び火を熾して火をいじりながら暇つぶしと闇への恐怖を紛らわせているうちに眠りに落ちていった。
無事に夜が明ける
たぶん5時前くらいに、薄明りのなか寒くて目が覚めた。2時間くらいしか寝てないと思う。夜よりも明け方のほうが断然寒いですね。
シートの結露を払って、再び火を熾してコンポタとコーヒーを啜ると身体が一気に暖まって覚醒していくのを感じた。
警戒用の即席アラートは鳴らなかった。鳴っても気づかなかっただけかも知れないけど。
沢伝いに下流へと進み、無事バイクを止めた林道へ戻れた。
前日は、あわよくば朝マズメの釣りができる、とか考えていたけど、実際は疲労感いっぱいでそんな気持ちは微塵も湧いてこなかった。
帰り道に食べた牛丼はめちゃくちゃ美味しかったです。
遭難に備えて持っていて助かったアイテム
アルコールを燃料に使う小型ストーブ。火があるのとないのでは安心感に天と地ほどの差があります。山に入るときは必ず携帯するようにしています。
アルコールストーブは火力調整ができなかったり風に弱かったりと、どちらかというと趣味性が強いアイテムですが、アルコール燃料は田舎でも薬局などで入手できるのでアウトドア用のODガスボンベより入手難度もコストも低いのが魅力。ただし、アルコールの火は日中だと見えないうえに、気化したガスは目を傷めるので密閉空間での使用は厳禁。メチルアルコールは”目散る”と揶揄されるほど。
実用性なら断然ガスバーナーですね。 燃料用アルコール。
アルコールストーブに使った場合、50mlで5~10分くらい燃焼できる(風の有無やストーブの種類によって大きく変わる)。
カップラーメンに必要な水量なら5分程度で沸騰します。
飲んだら死ぬ。 手のひらサイズのネイチャーストーブ。
普段はアルコールストーブの五徳兼風防として利用してます。折りたたむと非常に小さく板状になるので邪魔にもなりません。
小枝を燃料にして焚火もできますが、本体が小さいので常に小枝を投入し続ける面倒があります。 いわゆるコッヘルです。クッカーというほどでもないですね。
これがないと水を沸かせません。
源流の水は直接飲んでも早々腹をこわすこともないとは思うけど、山中で下痢になったりしたら体温も体力も奪われて悲惨なことになるので、いちおう煮沸しました。
アルミ製は安くて雑に扱える半面、熱伝導が高くて唇をやけどすることがよくあります。 コーヒー用のマグカップだけチタン製のカップを使っています。
飲み口が熱くなりすぎなくて重宝してます。でもちょっとお高いです。 ターボライターとも呼ばれます。
ふつうのライターは少しの風でも着火できなくなりますが、こいつは多少の風雨の中でも火がつきます。
ガスは充填できるようになっており、市販のカセットボンベから供給できるので経済的。フル充填で15分くらい使えます。ノズル部が伸縮するので、アルコールストーブへの着火も安心。お墓参りで線香に火をつける際に大活躍したりもします。
多くのカセットボンベは主原料が液化ブタンですが、高所や気温が低いときに火の着きが悪い場合はプロパンが混合されたカセットガスを使うといいです。
これを持っていたのは本当に幸運でした。たまたま前の週にキャンプへ行っていたおかげでウエストポーチに偶然入ったままになっていましたが、普段の釣りでは持ち歩いていません。これナシだと絶望していましたね。
単三電池1本で8時間、45ルーメンの光量は完全な闇の中でも行動できるギリギリのライン。 ベストセラーのサバイバルシート。
長財布程度の大きさと厚みで携帯性に優れるブランケット。
風を通さないのでテントも無いような野営の際に体温を保ってくれる。
ガサガサとした音もせず、数回使用したがまだ使えそう。
めちゃくちゃ結露するのが難点。防風用と思ったほうがいい。 おなじみカロリーメイト。味が何種類かあるがどれもおいしい。
行動食に最適なのでよく持ち歩いている。
昔缶ジュースタイプの恐ろしくまずいバナナ味があったような気がします。 これは安価なナイフながらとてもよく切れます。
ただ、この遭難では一切使うことがなかったので別になくても…。キャンプだと必ず使うし野生動物の襲撃に備えて護身用に持っておくのもいいですね。以前人里離れた山奥でキャンプしたときに、寝ていたらテントを動物に引っかかれて腰が抜けるほどびびったことがあります。戦って勝てるわけではないですが、持ってるとちょっとだけメンタルが強くなります。
折りたたみタイプは必ずロックのあるものを選ぼう。
あとはテープ、タオル、ウエットティッシュ、コーヒーにコーンポタージュ、空のペットボトルなど。
テープは釣具の修理や雨具の穴をふさいだり、ウエーディングシューズの靴底のフェルトが剥がれたときに補修したこともあるので持ち歩いてます。怪我や靴擦れしたときに傷テープがわりに使うこともあります。ぺちゃんこに潰すと荷物の隙間に入ります。
タオルやウエットティッシュもなにかと重宝するので持ち歩いています。アルコールを含んだものがオススメ。
コンポタは手軽にカロリーと塩分が補えます。
ペットボトルは軽量だし潰せるし水筒より便利。
最近コンポタよりもハマってるスープはこれ。
ここまでのアイテム+釣具が15リットルのザックとウエストポーチに入る。一番かさばるのがアルコール燃料のボトル。
持っていたらもっと快適だったアイテム
釣りの時は余計な荷物を持たずに身軽にしていますが、登山なら持っていたいアイテムたち。
とはいえ、山屋ではないのでプロが使うような本格的な装備は持ってません。
これらを常備すると30リットルのザックになってしまうのが悩みどころ。
この野営では幸い雨は降らなかったが、雨が降ると遭難の確率がハネ上がります。そんなとき、雨をしのげるツェルトは心強いアイテム。
本格的な登山で使うものも1万円程度なので、安心のブランド、アライテントをチョイス。
これ単体だと500mlの紙パックをちょっと太くした程度で重量も280グラムと携帯性はバグツン。
ただ、別売りのポール(登山ストック)や張り縄を揃えるとちょっと嵩張る。
立木を利用して張ればポールは必要ないけど、立木がないような森林限界を超える高所などではポールが必要。低山でも、手ごろな地面を見つけてもちょうどいい立木がなかったりすることはかなり多い。
ポールなしで運用するには長めのパラコード(張り縄)を常備したうえである程度の技術を必要とするので、練習がてら家の庭で張ってみるといいですね。 レインウェア。
山の中では傘は邪魔なだけなのでしっかりしたレインウェアがほしくなる。
モンベルなど山用ブランドはかなり高価だが、スポーツブランドなら1万円程度でラインナップされている。
できるだけ収納サイズが小さくて軽量なものを選びたいところ。
雨に濡れると夏場でも簡単に低体温症に陥ります。低体温症に陥ると筋肉が動かせなくなり感情が鈍化、正常な判断ができなくなります。絶対に濡れるのだけは避けてください。 ガスバーナー。
冬山登山するわけでもないのでお手軽なカセットボンベタイプで十分。
アルコールストーブと違って風の中でも安定した火力を発揮してくれる。 山岳地図。奥多摩方面の主なルートが網羅されている。
一般的な地図と違ってルートの地形状況や滝の有無などかなり詳細に記されている。
スマホの地図はしょせん車が入れる道しかカバーしていないし、電波が届かないところだとA-GPSも機能しないのでGPSの精度がガタ落ちする。けど大雑把でも現在地の見当が付くと、紙地図と照らし合わせて現在地を特定できる。 安心のブランド、シルバのコンパス。
スマホの電子コンパスや安物の小型コンパスはぜんぜんアテにならないので。 これは何をするものか?
答えは、太陽光を反射して信号を送るシグナルミラーです。
これ使う状況っていうのはもう完全に遭難していてヘリとか救助隊が入山してる状況なので、できる限り使わないに越したことはないのですが。
数キロ先の隣の山からでも見えます。普通のミラーと違って光の収束度が高いようです。
カードサイズだけど厚みがあって財布に入れるのはちょっと…。傷つきそうなのでダイソーのクッションポーチとかに入れておこう。
遭難しないに越したことはない
僕は山屋ではないので趣味で登山をしたりはしません。せいぜい夏の富士山に登った程度。
それでも山に入ることがある以上、最低限の装備と安全を確保せねばとつくづく思います。
奥多摩エリアは平成28年に58件の遭難事故があり、その17%にあたる10人が亡くなっています。しかも8人は雪のない時期で。
さらに渓流釣りでは4人が遭難したうち3人が亡くなっている。
釣りで山に入る人は釣具で手一杯で、他の登山客に比べると何の装備も持っていないことが多いと思う。ルートのある登山と違って険しい沢の中を、多くの場合単身で進み、怪我や転落の可能性が高い釣り人こそ遭難に警戒するべきかもしれませんね。
遭難してしまったら
僕の場合はあがってきた川をそのまま下るだけなので道に迷っている状態ではありませんでしたが、現在位置がわからない、というのはもう遭難です。
体力のある初日から二日目にかけては、道を探して歩き回るのはやめたほうがいいです。
山は裾野に行くほど面積が広くなり、その広大な面積のしかも見通しの効かない山中で登山道を探すのは不可能に近く、いたずらに体力を消耗してしまうだけです。
体力のあるうちに頂上を目指しましょう。頂上へすすむほどに面積が縮小するので、登山道を見つけやすくなります。
単独ではなくパーティーの場合、登山経験が豊富で体力のある人が最後尾を行きましょう。次に登山経験のある人がトップを歩いてルーティングしましょう。
体力に乏しく経験の浅い初心者パーティーの場合は、へたに動き回るよりもいっそその場に留まったほうがマシかもしれません。とにかく体力が残りの寿命と考えて温存しましょう。
三日目以降になると体力が著しく低下します。この状態で頂上を目指すのは足を踏み外したり転倒したりと危険度が飛躍的にアップします。無理をせず、できれば水を確保できる沢などを見つけ脱水症状を防ぎましょう。水さえあれば1週間くらいは食べなくてもなんとか生き残れます。水の調達が容易な場所で救助が来るのを待ちましょう。ただしくれぐれも無理して水を探さないように。近くで小鳥を見つけた場合、水場が近い可能性があります。
沢は森が開けているので上空から視認しやすくなります。日中は沢で上空の見えるところに待機し、夜間は沢を離れたところで体温の維持に努めるのがいいと思います。沢は風の通り道でもあるので、冷たい空気や水分を含んだ霧が通り抜けます。夜を過ごすには適していません。
また、絶対に川を下ってはいけません。基本的に下ってはいけません。
特に、知らない川を下ってはいけません。
山の川というのは山を切り裂いて落ち込む谷なのでその両側は切り立った崖、渓流になっています。下った先には必ずどこかで滝に出くわします。迂回するにも周囲が崖で相当引き返さなければならないことがあります。川の中をすすむのは体温を奪われかなりの体力を消耗し、そのうえ引き返すことにでもなったら貴重な体力をますます削られてしまいます。
川は山の低いところへと流れていきます。山を下るというのはどんどん低いところへ誘導されてしまうということで、けっきょく川に行き着いて行動不能になってしまうことになります。
ただし山の遭難と森の遭難では対応が違っていて、森で遭難した場合は川沿いを下るほうが得策です。森は頂上と呼べるほどの高低差があるわけでもなく、川も山に比べて切り立っていたり岩場があったりすることは稀です。
あと、野生の植物を食べてはいけません。
生息環境によってプロでも毒草との見分けが難しいにもかかわらず、大したカロリーも無くて死に至る毒を持っている種類もありリスクが大きすぎます。
救助ヘリの音が聞こえたら掲げて振り回そう。声はヘリの音にかき消されてまったく聞こえないので、前述のシグナルミラーなども使って目で見つけてもらえるようにしよう。 北海道とはいえ7月でも、水に濡れると容易に低体温症に陥るという恐怖。 救助隊員の著作。
読むと山に行く気が萎えるので、旦那や彼氏が勝手に山に行くので困ってるという人はプレゼントしてみては。 でもこういう漫画とか読むと山に行きたくなるんですよね。
みっちー
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