オペラは敷居が高い印象があると思いますが、是非この雰囲気を体験していただきたい!2018年9月、本場イタリア・ローマ歌劇団がスペシャルな演目を引っ提げて、東京文化会館(上野)にやってきました。演目はヴェルディのオペラ「椿姫(La Traviata)」で、あの有名な女性映画監督ソフィア・コッポラの初オペラ演出!衣装はすべてあのヴァレンティノ・ガラヴァーニが担当!!!やばい、なんてゴージャスな企画なんでしょうか♥ 今回ローマ歌劇場のリニューアルに伴い、引越公演として東京を選んでくれたのです。
一人で心臓がハクハクしてしまいましたよ、これを聞いたときは。2016年にローマで上演されて好評を博し、満を持して2018年9月9日、東京文化会館で初日を迎えました。一番安い席のチケットをゲットし、5階席の端っこからオペラグラスをガン見で、その瞬間に立ち会うことができました。本当に素晴らしい体験でした。
「椿姫」の簡単なあらすじ
パリ 高級娼婦と若い青年との純愛と悲劇
(一幕)高級娼婦でパリの社交界で売れっ子のヴィオレッタ。実は体調が優れない模様。パトロンも何人かいる中で、1年前から彼女に惚れている若い男性がいる。
(二幕)彼の純愛にひかれて二人はパリを後に田舎にひっそり暮らす。段々お金に困り、彼女が資産を売りに出して生活している事が、彼にバレる。そこで彼のお父さん登場。妹の結婚相手のために、彼女に身を引いて欲しいと願う。
(三幕)彼女は彼と別れ、パリに戻る。社交界に戻った彼女に対し、彼は公然と罵声を浴びせる。悲しくなる彼女。(四幕)病状が悪化し、彼女の命はわずか。そこに彼、彼の父親が現れ、心からの詫びをし、彼女は他界する。
オペラのお約束
オペラ初心者へ、ちょっとしたお約束を、私的偏見織り交ぜてざざっとご紹介。
ソプラノ、アルト、テノール、バリトン
女性で一番高い声でアリアを歌うのがソプラノ歌手。主役の女性です。
アルトは低めの女性の歌声。
男性で美しい高い声で歌うのが、テノール歌手。主役の男性です。
バリトンは低い声を響かせる男性。今回はお父さん。
このようにオペラには、役と歌に決まりがあります。
体が楽器 マイク無しで劇場に響き渡る
海外のソプラノ歌手って、ぶっちゃけおデブです。絶世の美女なのに巨漢の女性だなんて、昔は私的には物語に入り込めなかった(笑)。でも、フランチェスカ・ドットさんはそんなことはなく、大変チャーミングな方で、衣装がお似合いでOKでした。
マイク無しで歌を響かせる、あんな高度な技術を使って鈴を転がすように歌うためには、沢山食べて太らないといけないそうです。大変ですね。でも最近は、スタイルのよいソプラノ歌手も結構見かけます。
曲、歌、芝居、バレエ、美術の総合芸術
オペラは総合芸術だと言われています。確かに、餅屋は餅屋?それぞれのプロフェッショナルがコラボレーションして出来上がるものです。
オーケストラ生演奏
生演奏の迫力は実際に劇場に行くと分かります。録音とはぜんぜん違います!オペラ通は、指揮者が誰かで判断して、演目に行くかどうか決めるそうです。今回の指揮者はヤデル・ビニャミーニ、とてもお若い方でした。若い指揮者は、若い完成で纏め上げていくのでしょうから、例えば以前聴いた演奏とは違うとか、違いが分かるんでしょうね。
有名なアリア、歌
沢山の有名なアリア(曲)があります。例えばフィギアスケートの演技で聞いたことがあったり、CMやドラマ、映画で使われていたりする1,2曲であれば知っているし、楽しいです。ソプラノ歌手のコロラトゥーラ(高音を歌う技術)を試すような、超絶技巧的な曲もあり、歌い手がいなくて上演されないオペラもあるほど。モーツァルトは、恋人であった歌手を活かすための難しい曲を書いた、という逸話もあります。その昔は野外劇場で上演されていた事を考えると、遠くの人にも聞こえるよう、歌う技術はとても重要だったと思います。
芝居
18、19世紀のヨーロッパ貴族の暇つぶしのようなものでもあったので、下世話な物語、残酷物語、オリエンタルすぎる物語など、ちょっとあれ?って思うものも多いです。でも、それが面白いです。昔の貴族って、本当にどうしようもない恋愛ものが大好きなのね…って。まるで日本の歌舞伎、文楽などと時代が被ります。
舞台美術
オペラ劇場は天井が高い!その天井を生かしたゴージャスなセットが売りの古典オペラはなかなか目にする事は出来ません。ローマ歌劇団はセットも全部自前で持ってきたはず。昔は、イタリアの野外劇場で上演された「アイーダ」は、象や馬が登場したそうです、スペクタクル!
衣装
今回は、衣装が大注目でした!
衣装までステキな古典オペラはそんなに無いと思います。たまに鬘(かつら)のあってない人とか、肉感的になってしまうお姫様とか。私はつい気になってしまうのですが、ヴァレンティノのオートクチュールを身にまとって出てくる演者は、まるで本物の貴族でした。色もケバケバしくなく統一され、素材が軽い感じで、一点豪華主義のような色使いで、センスが最高に良い。
劇中バレエの華やかさ
是非注目してください。言葉がわからなくても、あらすじがイマイチでも、バレエのシーンは見てるだけで幸せになります。劇中劇として、バレエ団が踊るシーンが間に入ることが多く、これが素晴らしい。「椿姫」では、社交界のパーティーに、ジプシーが踊りを披露するシーンがあり、フラメンコ調の設定がよかったです。
バレエだけをずっと見続けるのもしんどいけど、短時間で舞台が華やかになるバレエシーンは、オペラを見に来て得した気分になり、とても好きな瞬間です。
上演時間は長く、休憩が3回ある
忙しい現代人には、これがネックだと思う・・・。ええ、4時間ですかぁ?みたいな。劇場に着き、パンフレットを見ると、1幕30分、休憩30分、2幕30分、休憩20分、3幕30分、休憩20分、4幕30分、カーテンコール。約4時間かかるのです。
休憩時間をどう過ごすか?が大切。華やかな社交界の印象そのまま、ロビーにはステキなお客様の社交の場が広がっています。生け花も豪華!そこに自分もちゃっかり混じって人間観察するのが楽しいのです。
1幕後の休憩時間は、皆さんの感想やら意見やらが聞こえてくるので、興味深いですよ。
その後は、シャンパン飲んだり、併設されているレストランで軽食を取ったり、外に出てリフレッシュしてきたり、みんな色々な過ごし方をされています。もちろんトイレ休憩や仮眠も大切。
ソフィア・コッポラの椿姫は、正統派だった
オペラ新演出!と聞くと、何か奇をてらうような、前衛芸術作品にでもなるのかしら?と思いがちですが、彼女の演出は、とってもトラディショナルでした。素直に、誠実に、この演目に向き合って丁寧に作り上げているのではないかなと。そこに好感が持てました。
主役ヴィオレッタの衣装
1幕:カタログ表紙の黒い衣装に裾が長い緑色のフリル、まるで孔雀の羽のよう。頭にはピンクのカメリアの髪飾り。イヤリングとネックレスは大きな真珠。黒い髪を1つに束ね、凛とした姿で大階段をおりてきます。貫禄ありって感じ。
2幕:がーん、忘れた(笑)。白いオーガンジーの可愛らしいワンピースだったようで(別サイトでチェック)あっという間にパリに行ってしまうので、印象が薄かった。社交界時代とは間逆のラブリーさ。(初日の画像はこちらのサイトで)
3幕:真っ赤なタフタのドレスで登場です。エキストラがみな黒い衣装の中、紅一点。椅子にもたれかかるシーンも印象的。この裾がほわっとしてて気持ち良さそう。衣擦れの音もちゃんと聞こえてきました。
4幕:病床のシーンでは、なんとも淡いピンクのネグリジェで、最後はとても可愛らしい印象で、儚い。普通の女性である事が分かりました。パールの小さなピアスもいい。この時のヴィオレッタが一番好きです。
舞台中に絨毯が敷き詰められていた
1幕は、大きな螺旋階段が、どーんと真ん中に。これが象徴的でした。シンプルでありつつも、椅子やテーブルは本物志向。オペラグラスでじーっとみてたら、床にスミレの模様の入った年季のはいった絨毯が敷き詰められていたのです。そこまでのこだわりとは!すごいなあ。全幕、床まで変えていることに感動しました。
エキストラ全ての衣装がオートクチュール
ソフィア・コッポラといえば、ガーリーな淡いピンクが印象的。映画「マリーアントワネット」の衣装は本当に可愛かった。今回のエキストラ達、1幕目は女性みな淡いピンクのオーガンジー。3幕目は、その上に黒いオーガンジーを乗せたような衣装にお召し替え。これはナイスアイデア。それぞれデザインも違うし、髪形やアクセサリーもそれぞれ拘っていた様子。そして女性みんなが手にしている扇子の色合いも統一されていました。
男性人はステキなタキシード。背も高くてタッパもあり、本物の紳士が沢山!目福です。
主役ヴィオレッタの物語にすーっと入っていけた
特に主役のフランチェスカ・ドットさん。彼への愛情や苦悩、色々な表情がストレートに心に響いて、歌だけでなくお芝居としても最高に良かったと思います。人間ドラマとして、映画のワンシーンを見ているような。映画監督のソフィアが仕掛けた空間だと思いました。
オペラを観てみよう
チケット価格は高い(仕方がない)しかし!
ローマ歌劇団はS席が54000円。一番安いF席で17500円です。ひえー、二人で観劇したら10万円以上でございます。引越公演となると、機材スタッフぜーーんぶ持ち込みで、上演期間のみんなの宿代も含まれれば、そりゃ仕方ないかなと。
早ければ1年ぐらい前からチケットの先行発売が始まりますので、チェックしておきましょう。先行ならば一番安いチケットが手に入るはず。私は1万~2万以内と決めています。
ロビーの華やかさ!最上級のおめかしで
休憩時間のファッションチェック!これが実は一番楽しみ。結婚式とは違う、個性豊かな面々。こういう所でシャネルバックが活躍するんだーとか、パール率高いなーとか。お着物の方、夫婦揃って最上級のおめかしで登場な方、若い方はワンピース着て髪をアップにしてキラキラしてる。モード系もいいな。初めてで不安な場合は、ブラックドレスがいいと思います。
オペラ観劇にあわせて、何を着ようか、靴は、バッグは、アクセサリーは…事前準備するのも楽しいです。でも基本的にはドレスコードは自由。天井桟敷(安い席)の方は、ジーンズの方もいます。
初日は格別。各界の有名人がたくさん
オペラクラシック関係、芸能関係の方や、イタリアの関係者、以前は小泉元首相に遭遇した事もありました!(オペラ好きで有名ですよね)ご招待されている方もいるでしょうし、この日を待っていた、というオペラファンもいらっしゃいます。
純粋なオペラファンって、男性が多いと思います。私は1人で観劇に行きますが、両隣男性ってパターンがほとんど。歌姫のファンなのでしょうか。楽曲のファンなのか。サラリーマンの方が仕事帰りにやってきているシーンも見られます。
CDやYouTubeで繰り返し聴くと、なおよし
有名な演目は、ネットの動画でアリア(歌)を予習しておきましょう。そうすると、よ、待ってました!って気分に自分もなれます。マリア・カラス、という有名なイタリアの歌姫がいますが、彼女の動画は沢山でているので、初心者には良いと思います。私もベスト版を持ってます。美味しいとこ取りで。
劇場では、有名なアリアを歌唱後、遠くから「ブラーバー」って聞こえる瞬間がたまりません。Bravo(ブラボー)は、女性ならBrava、複数ならBravi。
オペラ初心者にオススメなのは?
有名な物語が良いと思います。「椿姫(ヴェルディ)」「魔笛(モーツァルト」「蝶々夫人(プッチーニ)」など。難解で暗いワーグナー作品等は眠くなるので・・・。蝶々夫人は日本人が主役ですから、導入には面白いと思います。魔笛はファンタジー。どこかで年に1度は上演されている位メジャーな作品ので、行きやすいと思います。
耳なじみのある曲がある「カルメン(ビゼー)」や「トゥーランドット(プッチーニ)」も楽しいと思います。簡単なあらすじと曲をおさらいして観劇することをオススメします。せっかくの雰囲気を楽しむには、オペラは予習が大切です。
手軽に観るには、新国立劇場(新宿)
新宿初台にある新国立劇場。日本で初のオペラ専門劇場です。創立20周年とのこと。
毎年色々なオペラを上演しています。演出家が海外の方だけでなく、日本の方が作・演出のオペラ作品もあります。エキストラ、コーラス、ダンスは日本人が参加し、主役級は海外から招かれます。特に新国立劇場のコーラス部は素晴らしいと評判です。
ローマ歌劇団と違い、日本人がほとんどなので、ヨーロッパの作品なのにイメージが若干うん?って思う節もあるところ。でも、実力は問題ないし、価格も半分ですから、リーズナブルだと思います。
「一人オペラ」を体験してみよう!
チケットが高額で、半年も前に取得するので、友達を誘うのも結構苦労します。共通の趣味がある方がいるなら楽しいですが、なかなかそうも行かない。
私は思い切って一人で観劇するのをオススメします。何故なら、気兼ねなく作品に没頭できるから。そして、お1人様、結構多いです。男性ファンの方は、知的レベルが高そうな方ばかり。安心します。
D席、E席、F席など、1万円~2万円以内で収めて、オペラグラスを持参しましょう。最近オペラグラスを新調しました!いいのがあるんですね~。私はコンパクトで見た目が良い、こちらのNikon製品を購入。
アイドルコンサートなどのニーズも高く、皆さんお金と性能に糸目はつけないらしいです。暗い劇場で使うので、明るさがポイントらしいです。一番後ろの席でも、十分出演者の表情が分かります。オケボックスの人の表情まで見えちゃいます。
今までの安物とは世界が違ってビックリ。後ろの方から見るほうが、セット全体の印象や歌の響、歓声に包まれるような感覚になり楽しいです。
以上、昔のヨーロッパにタイムスリップして、リアルタイムで見てみたい~、そんな妄想が広がります。でもそれじゃ言葉がわからないな・・・。今は日本語字幕付きで観れるなんて、しかも女性一人でフラっと行けて、とっても良い時代です!
●G.ヴェルディ作曲 『椿姫』全4幕 NBCのページへ
9月9日(日)15:00 東京文化会館
9月12日(水)15:00 東京文化会館
9月15日(土)15:00 東京文化会館
9月17日(月・祝)15:00 東京文化会館
「ぶらあぼ」サイトに、出演者のインタビューやゲネプロの様子が見られます。
ukai
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